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第八章・7
「駿、例の物を」
「は、はい」
駿は、車の中で護衛から預かっていた大きな手提げ袋の口を開いた。
中には、赤い包装紙と銀のリボンで彩られた四角い箱がいくつも入っている。
伊織はその一つを取り出し、親衛隊隊長の名を呼んだ。
「武田(たけだ)くん」
「はい!」
赤い箱を手渡し、武田と握手をする伊織。
武田は、感極まって涙をにじませている。
その後も次々に、親衛隊の幹部から始まって、3年、2年、1年生へと順番にチョコレートを渡していく。
(凄い。伊織さま、親衛隊の人たちの名前を、全部ちゃんと覚えてるんだ)
駿は、ただただ感心しながら伊織を眺めていた。
笑顔を贈り、握手を交わす。
まるで、選挙活動だ。
最後の一人が済んだ時、始業5分前のチャイムが鳴った。
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