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第八章・10

「見たか?」 「……見ました」  そうか、と伊織はため息をついて、困った顔をした。 「できれば、駿には見せたくなかったが」  しかし、と伊織は椅子に掛けた。 「今の生徒は、『木曜日の少年』だ。今から、従者が次々にここへやってくるだろう」  荒療治だ、と伊織は駿に、物陰に隠れているよう命じた。  やがて、生徒会室のドアが開いた。 「伊織さま」 「やあ、『土曜日の少年』」  そんな、と少年は唇を尖らせる。 「ちゃんと、名前でお呼びください」 「すまない、怜央(れお)」  これ、バレンタインのチョコです、と怜央は柔らかな不織布の包みを差し出した。 「開けてもいいかな?」 「どうぞ!」  駿の眼の前で、伊織が怜央と親し気に触れあい始めた。

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