178 / 223
第九章・運命の番
「さあ、私からのバレンタインプレゼントを受け取ってくれ!」
放課後、天宮司邸で駿は伊織に仕立てたばかりのスーツを渡された。
「伊織さま、僕が欲しかったのは……」
事前に伝えた駿の欲しいものは、伊織の写真だった。
「生徒手帳に、挟んでおきたいんです」
「また無欲なことだな、駿は」
こんなやり取りを、一週間ほど前にやったはず。
「だから。今から写真を撮るのだ!」
駿も一緒にね、と言う伊織の言葉に、駿はようやく納得した。
(それで、スーツかぁ)
新しいスーツを身につけ、駿は伊織と共に出入りの写真家の前に立った。
屋敷の一室が、まるでスタジオだ。
ともだちにシェアしよう!