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第九章・9

「伊織さま、汚いです! 僕、浴槽の中に……ッ!」 「多分もう、流れてしまっているよ。気にするな」  繋がったまま、二人は温かな湯の中に揺蕩うた。 「気持ちがいいな。生まれる前、羊水の中もこんな感じだったのだろうか」 「どうでしょう」  体の芯まで温まり、伊織はようやく駿の内から引き抜いた。 「あ……」  何だか、名残惜しい。  引き留めるつもりはなかったが、駿は小さな声を上げていた。 「大丈夫だ、駿。今度はベッドが待っている」 「い、伊織さま!」  のぼせたのは、湯のせいばかりではないだろう。  真っ赤になって、駿は浴槽から上がった。

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