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第九章・24

 伊織の腕の中から、するりと抜け出す駿。  ああ、君はそうやって白い翼を広げて、私の知らないところへ飛んで行ってしまうのか? 「待ちたまえ、駿」  伊織は思わず、その腕を掴んでいた。 「行かなくてもいい。君はこのまま、泊って行くんだ」 「伊織さま?」 「土曜日の少年は、二度と来ない。日曜日も、月曜日も、火曜日もそうだ」  駿は、きょとんとしている。  伊織さまは、一体何を考えているのだろう。 「従者は、本日をもって解任する」  卒業まで、待つつもりだった。  その方が、駿のためになると思っていたからだ。  不穏な嫉妬から、彼を守れると考えていたからだ。

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