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第九章・26
「伊織さま、いいんですか? 両親も揃っていない貧しい家の子が、伊織さまみたいな立派な御家柄の中に入るだなんて……」
「私の両親だって、好き勝手やっているんだ。誰にも異論は言わせない」
「それに僕は、Ωです。αの伊織さまにふさわしいかどうか……」
「Ωとαの間には、素敵な魔法の言葉がある」
『運命の番』
「私と駿は、運命の番なんだ。結ばれるべくして、結ばれるんだよ」
「伊織さま……ッ!」
駿は、もう一度伊織の胸に飛び込んだ。
「泣くんじゃない、駿。笑ってくれ、さあ」
「伊織さま、伊織さま、伊織さまあぁあ……」
泣きじゃくる駿の背を、伊織は彼が泣き止むまで優しく撫で続けた。
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