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第十章・未来への卒業
3月2日。
伊織は、静かな生徒会室にいた。
「完璧な答辞だったよ」
静寂を破ったのは、同級生の篠崎だった。
「私は、いつだって完璧さ」
篠崎が渡してくれた、紙コップのコーヒー。
自販機で売られているそれを、伊織はいつものように篠崎から受け取った。
そして、いつものように言った。
「まずい!」
「最後まで、それか!」
いや、すまない、と伊織は言いなおした。
「篠崎のご馳走してくれるコーヒーは、いつだって美味しかった」
「ホントかなぁ」
二人で、笑い合った。
生徒会長と、書記。
こうして二人で、まずいコーヒーを飲むのも、今日で最後だ。
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