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第十章・3

「君がもし、駿からの手紙を受け取っていたら、どうするつもりだった?」 「もちろん、一度会ってお喋りしただろうね」  そして、とコーヒーを一口飲んだ。 「僕には恋人がいるので、御影くんとお付き合いはできません、と」  ふふ、と伊織は口元に笑みを浮かべた。 「ようやく私も、その境地にたどり着けた」 「うん」  駿は、伊織と付き合うことで、劇的に成長した。  しかし、それは伊織も同じこと、と篠崎は考えていた。  不遜で、自分勝手だった生徒会長。  今やそのまなざしは、真に大人びたものに変わっている。  篠崎がそう考えた時、伊織が突然頭を抱えた。

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