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第十章・5

 それはそうと、と篠崎は伊織の制服を指さした。 「ボタン、どうしたんだ」 「いつの間にか、全部誰かにむしられていた」  やれやれ、と篠崎は腕を広げた。 「御影くんが、悲しむぞ。第二ボタンまで、どこかにやってしまって」 「それは抜かりない」  伊織はポケットから、光るボタンを取り出した。 「誰にも渡さないように、先回りして自分で取っておいた」 「さすが天宮司……」  では、と篠崎はコーヒーを飲み終え、ドアに向かって歩き始めた。 「ボタンを受け取りに、御影くんがここに来る、ということだね」  邪魔者は去るよ。 「篠崎」 「何だ?」

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