213 / 223
第十章・10
「ああ!」
「ど、どうしたんですか、伊織さん!」
「やっぱり、卒業したくない! 一年生になって、また入学したい!」
「もう! またそれですか!?」
しっかりしてください、と駿は伊織の腕を取った。
「車が待ってますよ。お屋敷へ戻りましょう」
「解った……」
駿に腕を引かれて校庭を早歩きで去る伊織を、窓から見守っている人々がいた。
「名物生徒会長も、とうとう卒業ですか」
「この学園も、寂しくなりますなぁ」
微笑み合うのは、3年生の担任たち。
伊織には、散々手を焼いて来たはずの彼らだが、そのまなざしは優しい。
「案外、御影の尻に敷かれるかもしれませんよ?」
「違いない!」
職員室は、笑いに包まれた。
ともだちにシェアしよう!