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第十章・10

「ああ!」 「ど、どうしたんですか、伊織さん!」 「やっぱり、卒業したくない! 一年生になって、また入学したい!」 「もう! またそれですか!?」   しっかりしてください、と駿は伊織の腕を取った。 「車が待ってますよ。お屋敷へ戻りましょう」 「解った……」  駿に腕を引かれて校庭を早歩きで去る伊織を、窓から見守っている人々がいた。 「名物生徒会長も、とうとう卒業ですか」 「この学園も、寂しくなりますなぁ」  微笑み合うのは、3年生の担任たち。  伊織には、散々手を焼いて来たはずの彼らだが、そのまなざしは優しい。 「案外、御影の尻に敷かれるかもしれませんよ?」 「違いない!」  職員室は、笑いに包まれた。

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