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第十章・11
「待った。ちょっと待ってくれ、駿」
「何ですか?」
寄りたいところがある、と伊織が向かったのは、学校園だった。
まだ春も早く花はないが、緑の息吹が力強い。
「駿、この小菊を覚えているかい?」
「あ、これは」
初めて伊織さまとお喋りした時に話題に上げた、小菊。
「小菊の花言葉を調べてみたらね、『逆境の中でもめげない』とあったよ」
まさに、君にぴったりの花言葉だと思わないか?
伊織はそういって、菊の葉を撫でた。
「君は、本当によく私について来てくれた」
「嫌ですよ、伊織さん。過去形にしないでください」
そうだった、と二人で笑った。
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