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第3話
北海道の片田舎から、この大学に合格したのは暁一人だったから、自分の過去を知る人間もここにはただの一人も居ない。
(そういえば)
飼っていた鳥に似ていると、唯人に言われたことがある。
鳥に似てると言われたことなどこれまでただの一度も無いが、だから自分に優しいのかと思えばそこは納得できた。
(ちょっと、変わった奴だけど)
とにかく唯人は自分に優しい。
暁の秘密を知っても尚、その距離を徐々に縮めてくる。
(それに……)
暁自身、手放したくは無いと自然に強く願ってしまうほど……この短期間で彼は心の奥深くへと侵入していた。
***
暁が唯人と接触したのは、大学へ入学してから数日が過ぎた頃だった。
深夜に街を歩いていたら、背後から肩を掴まれたのだ。
『ごめん、人違いした』
『あ、ああ、いいよ』
『嘘、人違いじゃない。知り合いにあんまり似てるから、つい引き止めちゃった。俺、同じ学部で……』
『知ってる。アンタ目立つから』
『そう? なら良かった』
間近でフワリと微笑む顔が余りにも綺麗だったから……同じ男だというのに暁は動きを止めて見蕩れてしまった。
(普通に、しないと)
「この後って授業入ってる?」
「一緒だろ」
「そうだったね。じゃあ、俺の買い物に付き合ってよ」
一旦思考を切ろうとするが、また唯人から声を掛けられ暁は小さく息を吐いてから「分かった」と小声で返した。
(まさか、知り合いって言うのが、鳥だとは思わなかったけど)
「何、考えてるの?」
「え?」
「ニヤニヤしてる」
「な、何でもないよ」
変なことを考えていた訳でもないが、気恥ずかしくて言葉を濁すと、髪をクシャリと撫でられる。
「まあ、いいや。暁はどれがいいと思う?」
「うーん、こっちかな」
二つ示されたチョーカーを見て、好きなデザインを指で示すと、「分かった」と答えた唯人はそれをキャッシャーへ持って行く。
「暁は買い物ない?」
待っている間商品を見ていると、支払いを済ませた唯人が笑顔で告げてくるけれど……彼の入る店はどこも暁には手が出せない程に高価な物しか置いてないから、「ある訳無いよ」と困ったように返事をするしか出来なかった。
「唯の家って……金持ちなの?」
だから、思い切って聞いてみたのは暁の強い好奇心。彼のプライベートについては今まで殆ど聞けずにいたから、どんな環境で育ったのかを少し知れたらいいと思った。
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