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第5話
(だけど……)
「暁、どうする? もう降参?」
「まだ……」
今アナルを埋めているのは、遠隔操作のできる小型のローターで、手を使わずにそれを出せれば主導権は自分に戻る。
「そんなにイヤなんだ」
「イヤじゃない……わけ、ない」
どうしてこんな事になったのか、理由になんて意味も無い。ただ、この関係が終わるのを……恐れているのは自分だけだと、それだけは良く分かっていた。
『今日のところは、これで手を引いてくれるかな』
あの日、声を掛けてきた唯人は相手の男に金を差し出して告げ、それを受け取った男は少し迷うようなそぶりを見せたが、『ごめんね』と暁の頬へとキスをしてから、そのまま夜の町へと消えた。
『名前は?』
『暁、白鳥 ……暁 』
『なんか、ハンドルネームみたいな名前だね。俺は御園 唯人 、よろしく』
『あ、ああ』
その状況で何がよろしくだか訳が分からなかったけれど、現場を見られた気恥ずかしさに、促されるまま握手を交わし――。
「んっ……ふっ」
「恥ずかしい? 身体は悦んでるみたいだけど」
いつもは冷たそうに見えるほどポーカーフェイスの暁だけど……そんな風に言葉にされると、羞恥のあまり顔が火照ってみるみる身体が赤くなる。
「言う……な」
手を使わずにアナルの中から何かを出す行為自体、感覚としては排泄するのと同じような物だから……中は綺麗にしてあるものの、どうしてもいきみきれずにいた。
「あと三十秒」
「クッ、ウゥッ……」
残り時間をサラリと告げられ暁は再び歯を食い縛るが、焦りのせいでどこに力を入れればいいのか分からなくなる。
「十秒」
「アッ…嘘、嘘だっ」
「嘘なんて言う訳ない。ほら、あと五秒、四、三……」
「ンッ……」
必死に腹へと力を込めるが、こうなってはもう勝ち目は無い。諦めの表情を浮かべ暁が身体の力を抜くと、唯人が「ゼロ」と言ったと同時に体内 で道具が震え始めた。
「あッ、ウゥッ!」
「また暁の負け。勝ったの最初の一回だけだね」
「唯っ、やっ、ああっ」
後孔へと触れた指先がゆっくり侵入しようとしたから、暁は身体を反転させ……身体を起こして後ずさる。
負けた方が勝った方の願いを一つ聞き入れることと、勝った方が次のゲームを考えるという単純な遊び。
当然、負けた方が圧倒的に分が悪い。
だけど、辞めたいとも言えないまま、ここまで来てしまっていた。
「願いは……何?」
上擦りそうな声を抑え、なるべく抑揚を出さずに告げると、唯人の薄い唇の端が愉しそうに上がっていくのが目に映る。
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