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第6話
「やっぱり暁は面白いね。こんなになってるのに、まだそんな口が聞けるんだから」
「触ん……な」
「本当に触らなくていい?」
一人用のベッドの上では、いくら身体を引いてみたところで、唯人がその気になりさえすれば、逃げ場所なんてほとんど無い。
見せつけるようにリモコンのメモリを徐々にマックスへ近づけながら、股間を隠す暁の手首を掴んだ唯人の囁きに……暁は視線を彷徨わせたあと、小さく首を横へと振った。
***
「おはよう、暁、ちゃんと起きられたみたいだね」
「うん、ちょっと寝坊したけど、この講義外せないから」
「よかった。昨日は無理させちゃったから、心配してたんだ」
囁くように耳元で告げられ背筋にゾワリと鳥肌が立つ。本当に無理させたなんて思っているかは微妙だけれど、「平気だよ」と素っ気なく答え、それから暁はいつものように講義に聞き入るフリをした。
(でも、だけど、唯人は……優しい)
意地悪なことはするけれど、決して暁を傷つけない。
(それに……)
ゲームと呼ばれる行為をする時以外は常に暁に甘い。
(だから、勘違いしそうになるんだけど)
チラリと横に視線を送れば、涼やかな顔で外を見ている唯人の髪が風に揺れた。
「ん、どうした?」
視線に気付いた唯人がこちらに視線を向けて小声で言うが、バツが悪くて「何でもない」と短く答えるしか出来ない。
「変な暁……いつもだけど」
クスリと笑う表情が、眩しく見えて目を細める。
色素の薄い髪の毛に、陽の光がふわりと絡む様子が綺麗で見蕩れていたとは口が裂けても言えなかった。
***
『どうして?』
『そのどうしては何に対して?』
あの日――お互いの名を告げあったあと、誘 われるまま連れて行かれたシティーホテルの一室で、暁の質問に首を傾けた唯人は綺麗な笑みを浮かべ、『まあ、座ろうよ』と、その長い指で備え付けられたソファーを示した。
『どうして、御園さんは、あんな所に……』
促されるまま座った暁は、とりあえず一番気になっていたことを思い切って訊いてみる。ダイレクトに、同じ嗜好のの持ち主なのかと尋ねるだけの勇気は無かった。
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