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第12話

「一緒に住んでる人の名前は?」 「ん、自分で……」 「無理っぽいから俺がかけます」 「じゃあ、悠哉……須賀(すが)悠哉(ゆうや)。白鳥君、ごめん」  そう口走ったところで彼は瞼を閉じてしまったから……暁は小さく息を吐き出し、支えていた身体をそっと横たえた。 (アルコールの注文は、していなかった筈だけど)  それに、間違えて運ばれて来たらすぐに気づくんじゃないだろうか? 「意外に天然なのかな」  置かれていたウーロン茶の匂いを少し嗅いでみるけど、酒は飲んだことが無いから暁には良く分からない。 「大丈夫ですか?」  とりあえず、冷えたお絞りを額に乗せ、はだけてしまったシャツから覗いたキスマークは無いことにして、そっと着崩れを元に戻すと、暁は彼のスマホの中から言われた名前へ電話をかけた。  *** 「なにか……怒ってる?」 「どうして?」 「こんな、いつもと、違う……から」 「たまには違う趣向もいいだろ? それとも暁、何か悪いことでもした?」  耳元で低く囁く声から怒りの色は感じられない。  いつもと変わらぬ優しい声音にホッと息を吐き出すけれど、この状況で心の底から安堵する事は叶わなかった。 「あっ」 「怖いの? 鳥肌立ってる」  鎖骨の辺りへ指を這わされ、ピクリと身体を戦慄かせると、愉しそうに喉を鳴らした唯人が顎へと触れてくる。 「少し、怖い」  視界を奪われただけでここまで不安になるとは思わなかったが、何をされるかが分からない分、神経が過敏になっていた。 「今日のゲームは簡単だよ。暁が口で俺を達かせることが出来たら暁の勝ち。時間は二十分、それ以上は辛いだろうから」 「……分かった、から、目隠しと、手の取って」 「それはダメ」  跪いている暁の頬へと軽い口づけを落としながら、サラリと答えた唯人がベッドへ腰掛けたのが音で伝わる。 「でも、これじゃ……」 「大丈夫、口、開けて」  口ごもった暁の唇を、まるでノックするかのように唯人が指先で突っついた。怖ず怖ずと口を開いていくと、彼の指先が唇をなぞりそのまま中へと侵入してくる。 「初めて?」 「んう」  舌を摘まれそう問われ……喋れないから頷くと、「ホントに?」と囁く声に身体が先に反応した。

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