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第16話

 なぜなら……倒れた暁の口内にペニスを尚も深く挿し入れたまま、何を考えたのか唯人が突然鼻を軽く摘んできたのだ。 「ンッ……ヴゥッ!」  喉奥を何度か強く穿たれ、生命の危機を感じた身体が逃げを打とうとのたうつけれど、体格差と力の違いをまざまざ見せ付けられるだけ。  脚をバタバタと動かしてみても、唯人は止めてくれなかった。  何故急に、彼が豹変したのか分からず混乱するが、酸素不足で頭が回らず、まるで嵐のような仕打ちに暁は翻弄され続けた。 「苦しい?」 「うっ……ぐ……」  意識が朦朧とし始めた頃、この状況には似つかわぬような柔らかな声が鼓膜を揺らし、鼻から指が離されたから、暁は懸命に酸素を取り込む。 「んっ、んうっ!」 「うん、苦しいね。だけど、もう少し我慢して」  頬を優しく撫でられただけでどっと涙が溢れ出た。目隠しの上から目元をなぞり、「グショグショだ」と、囁く声がどこか淫靡に響くのは……暁の勘違いだろうか? 「ん……んぐぅっ」 (や、やだ! 苦しい、くるし……)  それから、再度鼻をキュッと摘まれ、激しく口腔を犯される。 「グッ……ン、ウゥ……」 「ホント、暁は、良く似てる」 (唯、何……言って)  極限に近い状況に……意味までは理解できなかったが、唯人がポツリと漏らした言葉は徐々に意識が薄らぐ中で、やけにはっきり耳へと響いた。  *** 『じゃあ、オナニーしてみせて。十分で()けたら、暁の勝ち』 (これは、夢……だ。最初の…ゲームの)  最初のゲームは当然ながら唯人の方が提案した。そんな物を見て何が愉しいかさっぱり暁には分からなかったが、興味があると言われてしまえば拒否することも出来なかった。 (あの頃から、俺は唯に逆らえない)  きっとこれが、惚れた弱みというのだろう。その一回だけ暁は唯人に勝利した。 (今日は、勝てたのかな)  勝てていたなら、暁の願いはただ一つ。それさえ叶えば、あとは彼が飽きる時まで負け続けても構わない。 (だから……お願い、神様……) 「んっ……う」 「目、覚めた?」  どうやら……やはりと言うべきか、途中で意識を絶ってしまっていたらしい。 「あ……ごめん」 「いいよ。俺が無理させたのが悪いんだし」  腕の拘束は既に解かれ、目隠しも取り払われている。唇に少し違和感はあるが、微笑む唯人はいつもと同じで、先ほどの激しい行為が嘘のように穏やかだった。

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