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第17話

「あのさ、唯、服着たいんだけど」  少しの間、黙って唯人を見上げていた暁だったけれど、思い切ってそう切り出すと……唯人が僅かに首を傾ける。  自分がベッドの上に寝かされている状況までは理解出来たが、どうして唯人に体を跨がれているか分からず戸惑った。  タオルケットを掛けられてはいるが、裸なのも落ち着かない。 「ダメだよ暁、まだゲームは終わってない」 「え? だって、唯がまた勝ったんじゃ……」 「うん、俺が勝った。だから、暁は何でも言うこと聞いてくれるんだよね」  喉仏の辺りにツッと指を這わされて、まるで猫をあやすようにそこを優しく撫でられた。 「……そうだった。なんか、いっぱいいっぱいで、頭から抜けてた。ごめん」  今日の出来事は許容範囲の遙かに上を行っていたから、直ぐにでもここから逃げたいような気持ちに支配されていた。だけど、考えてみればゲームの後、彼の望みを聞き入れるまでが一回のゲームなのだ。 「暁のそういう抜けてるところ、好きだな」 「抜けてるとか……言うな」  好きだなんて言葉にされれば、意味は違うと分かっていても、乙女みたいに胸が高鳴る自分が自分で気持ち悪い。  精一杯の虚勢を張って唯人を軽く睨みつけると、「ごめんごめん」と笑った彼が、不意に掛けられたタオルケットを暁の体からはぎ取った。 「あっ」 「暁は勝ったら俺に何をさせるつもり?」 「何って、別に……」 「内緒か。まあいいや、今日は……」  これまで彼が要求したのは、自慰が一番多かったけれど、時には大人の玩具屋に行ってローターを買わされたり、それを挿入した状態で一緒に食事へ行ったりもした。  だから、次に唯人の唇からどんな難題が飛び出すのかを唾を呑み込んで待っていると、「目を閉じて」と告げられたから不安は更に大きくなる。 「なんで?」 「いいから」 「……分かった」  どうせ彼には逆らえないから、諦めて暁は瞼を閉じる。気を失ってしまったのだから、きちんとした勝敗なんて、唯人にしか判りはしないが、彼が嘘を吐く可能性など微塵も頭に浮かばなかった。

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