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第18話

 ***  窓の外へと視線を移せば、真っ青な空に飛行機雲が一筋の線を描いていた。 「はぁ……」  溜め息を吐いた暁は隣の空席へと視線を移す。唯人が授業に来ないなんて、初めての事だった。 (何か、あったんだろうか?)  机上に置いた携帯電話を指先で弄びながら、先週末の事を思い出し、暁は再度ため息を漏らす。 『これ、いつも付けてて』  そう告げながら、目を瞑った暁の首へと唯人が手早く付けたのは、数日前、買い物へ行った時に買っていたチョーカーだった。こんな高価な物を貰える立場じゃないから断ったけれど、それではゲームが成り立たないと言われてしまえばそれまでだった。 「こんな……似合わない」  二重になっている革紐は、棒状の小さな金具をもう片方の輪の中に通すとロックが出来る飾りがついていて、不器用な暁にとっては前で留めるのは有り難かったが、それにしても、こんな事をされてしまうと、どうしても期待しそうになる。 (それに……)  暁が金属アレルギーだから、金具はプラチナの物にした……と言っていた。 (唯、どうしたのかな?)  唯人は暁の家へと来ても、絶対に泊まらない。金曜日も遅い時間になってしまったが結局帰った。  メールアドレスは知っているけれど、これまで一度も自分から彼に送ったことが無かったかし、迷惑なんじゃないかと思えば中々指が動かない。そもそも、大学に入って初めて携帯電話を持った暁だから、友人相手にメールを打つのもまだハードルが高かった。 「あれ、今日は一人?」  悶々としている内に授業が終わっていたらしい。頭上から響いた声に、驚いた暁が顔を上げると、可愛らしい女性が二人机の前に立っていた。 「あ、うん」  唯人以外の生徒に話しかけられたのは初めてだから、些か緊張気味に返すと、「御園君、風邪でも引いたの?」と心配そうに聞いてくる。 「いや、ちょっと分からないんだ。まだ連絡取ってなくて……唯に何か用事だった?」 「用事とかそういうのは無いんだけど……いつも二人でいるから、どうしたのかなって」  言いながら、頬を赤らめる彼女の姿に、暁は状況を理解した。彼女たちは唯人の事が気になっていたのだろう。 「この子、入学してすぐから御園君と友達になりたいって言ってたんだけど、話し掛けるタイミングが見つからなくて。彼、ほら、目立つから、ちょっと気後れするっていうか……それで、突然なんだけど、もし良かったら今度四人で飲みにでも行かないかなって……どうかな?」  きっと付き添いのなのだろう。もう一方の女の子がフォローするように告げてきた。 「飲みにって」  そんなことを言われても、正直返事に困ってしまう。未成年だからなどと答えても……興を削いでしまうだろうし、唯人に確認してみなければ、勝手に受けたり断ったりも出来なかった。

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