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第21話
せめて、自分の形が相手の望む物だったなら、僅かでも、希望を持てていたかもしれない……と。
(これ以上望んだら、ダメだって分かってる。けど……)
「暁は、そのままでいい」
そんな気持ちを見透かしたように、大きな掌が頭を撫で、耳に心地よい声音で告げられ、急に恥ずかしくなった暁は、視線をさまよわせて俯く。
「俺はそのままの暁と友達でいたい。さっきも女に囲まれて困ってるの分かってたんだけど、困ってる暁、可愛かったからつい意地悪しちゃった」
「可愛いとか言うなよ。でも、ホント困ってたから、助けてくれてありがとう。あと、つまらないこと言ってごめん」
ようやく全ての話が見え、唯人が怒っている訳じゃないと分かった暁は顔を上げた。彼は……唯人は、本当に優しい。自分みたいな人間にでも、このままでいいと優しく手を伸ばしてくれる。
(ちょっと、変わってるけど)
「じゃあ、あいこだ。この話はこれでおしまい」
「うん、分かった。でも、一つ聞きたいんだけど……唯、持病って……」
優しく微笑む唯人につられて暁は小さく頷き返し、先程から気になっていた事を勇気を出して聞いてみる。すると、驚いたような顔をした彼は、可笑しそうにクスリと笑った。
「ん? 嘘だよ。あの子たちも遠回しに断られたって、気付いた思うけど……暁、信じたの?」
「信じた。凄いビックリした。違うならよかったけど」
嘘を吐いたのは唯人なのに、愉しそうにそう尋ねられれば、途端に羞恥がわき出してきて、顔に熱が集まってしまう。
「暁のそういうところ、ホントたまんない」
「ちょっ、何?」
テーブル越しに引き寄せられて、耳元で低く囁かれ、突然の事に暁の体はピクンと大きく反応した。
「これ、良く似合ってる」
「くっ……くすぐったいって」
言いながら、チョーカーと首の僅かな隙間に人差し指を挿し入れて来たから、暁が体を引こうとすると、更に指が二本に増やされ革紐を強く引っ張られる。
「逃げないで」
「……え?」
「これ、襟で良く見えないから、上だけ脱いでちゃんと見せて。テーブルに座ってする? それとも俺の膝がいい?」
「唯、何言って……」
僅かに強くなった語気。
細められた彼の瞳に冗談で言っているのでは無いと悟って言葉を飲むと、「大丈夫だよ。誰も来ない」と、指を離した唯人が笑った。
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