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第22話

 *** 「これで……見えるだろ」 「ダメ。全部脱いで」  戸惑いながらもシャツを脱ぎ、タンクトップ一枚になった暁は唯人にそう尋ねるが、当然のように否と言われて、泣きたいような気持ちになる。 (これは、ゲームだから……それに、女じゃないんだから、上くらい……脱いでも平気だ) 「……分かったよ」  テーブルの上に座った暁が、そう自分に言い聞かせながら思い切ってシャツを脱ぎ捨てると、目前のソファーに座る唯人が指を伸ばしてきた。 「期待してるの? もう固くしてる」 「……触んな」  右の乳首をピンと弾かれて、たまらず体を後ろに引くが、逃がさないとばかりに摘まれ、痛みに暁は顔を歪める。 「やっぱり、下も脱ごうか」 「え?」 「全部脱いで」  まるで……普通の会話をしているみたいに、そう告げてきた唯人の笑みに、背筋を悪寒が走ると同時に体中に鳥肌が立った。 「それは……無理だ。だって、誰が来るかも……」 「大丈夫だよ」  確証も無しに囁く声に、何が大丈夫なものかと思う。 「唯、ホントは何か怒ってる?」 「ううん。怒ってない。俺はただ、暁と遊びたいだけ」 「でも、こんなの……」 「ん?」  ジーンズの留め具に掛かる唯人の綺麗な指先を、振り払えずに見下ろしたまま、暁はポツリと呟くけれど、『普通じゃない』の一言だけは声に出して言う事が出来ない。普通じゃないと人に言われるのは、とても辛いと知っているから。 「抵抗しないんだ。暁ってホント、俺の事が好きだよね」 「っ!」 「バレてないと思ってた?」  ニッコリと笑う唯人の言葉に、声も出せないくらい驚いた暁が緊張に固まる内、器用な指に留め具を外されてファスナーを全て降ろされた。  こうも直接的に言われては、どう答えればいいのか分からない。 「そんなこと……」 「普通、ゲームでここまでさせないよ」  ボクサーパンツのロゴが入ったゴムの部分を、人差し指でなぞられてそのまま中へと侵入しそうになったところで、ようやく暁は体を翻し床へと降りて(うずくま)った。 「……ごめん。帰る」  恥ずかしさと、いたたまれない気持ちに包まれ震える声で暁は呟く。こういう場面に慣れていないから、上手い言い訳も浮かばなかった。 「どうして?」  頭の上から声がするけれど、顔を見るだけの勇気が持てず、とりあえず……シャツだけ着ようと腕をテーブルの方へと伸ばす。と、いきなり手首を強く掴まれて、そのままソファーへ引き上げられた。 「痛っ……な、何す……」 「馬鹿だな、暁は」  困ったように微笑みながら見下ろしてくる唯人の顔は、今まで見た事も無いような酷薄(こくはく)さを滲ませている。

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