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第23話
「必死に隠そうとしてるところも可愛いかったけど、暁、自分からは絶対言わないつもりだったろ? それとも……これは俺の勘違いで、本当に何も思ってない? こんな事させるのは、セックスへの興味だけ?」
「っ!」
頭上で一纏めに持たれた手首がギリギリ痛みを覚え、暁が眉根を少し寄せると、近づいてきた彼の唇が頬へと軽くキスをした。
「そうか。暁はセックスが出来るなら、誰でもよかったんだっけ」
「違っ、そんなこと……誰でもよくなんか無い」
そんな返事をしてしまえば、認めたも同じになってしまうのに、突然の彼の豹変を前に理性が上手く働かない。
「じゃあ、俺が好き?」
「……きだよ」
「聞こえない」
「好き……だ」
半ば吐き出すように、想いを声に出してしまったその瞬間、今まで築いた彼との時間が全て終わったと暁は思った。優しい唯人が、こんな行動に出たのはきっと、思った以上にゲームを続ける暁に飽きたからだろう。
(だって、それ以外、理由なんて……)
頭に浮かぶもう一方の可能性になど目を向けない。そんな、都合の良いシナリオなど存在しないと分かっているから。
「もう、二度と唯には近づかない。それでいいだろ? 帰るから、離せよ」
睨むように唯人を見上げ、か細い声で暁が告げると、不思議そうな表情をした彼が「なんで?」と普通に尋ねてきたから、流石に訳が分からなくなって暁は視線を彷徨わせた。
「俺は暁を気に入ってるし、手放したくない。暁は俺が好き。だったら別に何の問題も無いんじゃない?」
「え?」
「それなりに大事にしてきたつもりだけど、分からなかった?」
チョーカーを指で弄びながら囁く唯人の眼鏡の奥、綺麗な色彩を放つ瞳に吸い込まれそうな気分になる。
「そんなの……」
確かに、チョーカーを貰った時もそうだったけれど、彼に優先される度、淡い期待を胸に抱いては、必死にそれを打ち消してきた。
「でも、唯はゲイじゃないって……言ってたから」
「うん、ゲイじゃない。女も抱けるからね。暁は難しいこと色々考え過ぎ。だから……」
「え? ……っ!」
手首がようやく解放されたと同時に体を伏せに返され、ズボンと下着を膝のあたりまで一気に引きずり降ろされる。
「唯っ、なにすっ」
抗おうと体を捩るが、力の差は歴然で……背後から脇の下へと腕を差し込まれ軽々持ち上げられれば、自然とドアが視界に映り、暁は体を強張らせた。今この瞬間、誰かがドアを開けないとも限らない。
「止めろよ……どうして」
緊張の余り上擦った声に、答えてくれる声は無かった。再度テーブルの角に座らされ、正面に立った唯人が薄い笑みを浮かべて見下ろしてくる。
「あっ!」
熱を持たない彼の瞳に、射竦められたように動けなくなった暁が体を震わせていると、「やっぱり暁は可愛いね」そう囁いた唯人が指を胸元へと伸ばしてきた。
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