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第27話

「……アキ」 「ん……」 「……暁、起きて」 「あ……ゆ…い?」  どれくらい時が経ったのかすら、自分では良く分からなかったが、体を軽く揺すられて、暁はゆっくりと瞼を開く。 「うん、そうだよ。暁、大学来なかったから、心配して来たんだけど」 「ん…ごめ……」  額へと触れる彼の掌が、ヒンヤリしていて気持ちが良かった。 「酷い熱」と呟く声は、耳には入って来ていたが、どこか意識がフワフワしていて、現実味などまるでない。 「謝らなくていい。ほら、これ飲んで」 上体をゆっくり起こされ、ペットボトルが口に添えられる。促されるままそれを飲み込むと、咽は酷く痛んだけれど、それ以上に体が欲していたから暁は無心に飲んだ。 「ゆっくりでいいから」  優しい声音が鼓膜を揺らし、焦点の合った視界の中へと唯人の笑顔が映り込む。 (やっぱり、夢だ)  朦朧とした意識の中、優しげな彼の表情を見て、やはりあれは夢だったのだと心の底から思えた途端、安堵の余り暁の瞳から次々涙が溢れ出た。 「どうした? 辛い?」 「ちが…怖い、夢……見て」  背中をトントンと軽く叩かれ、心配そうに尋ねられれば、熱に浮かされた暁は(うわ)(ごと)のように彼へと言葉を返す。 「どんな?」 「……夢なら…唯と……繋がり…かった」  質問の答えにはまるでなっていないという事にすら、暁はまるで気付けていないし、意識も切れ切れになっていた。 「せめて……」    夢の中にいる時くらい、道具では無く唯人自身を受け入れてみたかった……と、暁は強く思うけれど、声に出す事まではかなわず、ただ静かに涙を流す。 「暁、寝な。今度は怖い夢……見ないから」  甘く響いた唯人の声に、暁は嗚咽を漏らしながらもコクリと小さく頷いた。瞼の上に掌が置かれ、視界が急に暗くなるが、それが唯人の手と分かるから不安は全く感じない。 「おやすみ、暁」 「……すみ」  意識も体も既に限界を迎えていたから、暁は直ぐに眠りに落ちるが、途切れてしまう直前に……何かフワリと柔らかな物が、唇へ触れたような気がした。  *** 「白鳥君、大丈夫? 顔色悪いよ」 「もう大丈夫です。昨日と一昨日は、休んでしまってすみませんでした」  心配そうに尋ねる小泉に、頭を下げてそう答えると、「辛かったら帰るんだよ」と、軽く肩を叩かれた。本当ならばもう一日、休んでしまいたかったけれど、一人で居ると色々なことを考えてしまうから、仕事に集中することで少し意識を逸らしたかったのだ。

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