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第28話
(だって、あんな事……)
あの日……唯人の手に瞼を覆われ安堵に意識を手放した暁が、次に目を覚ました時、既に彼は部屋にはおらず、冷蔵庫に数本のスポーツドリンクが入っていた。
次の日も熱は全く引かず、学校は休むしか無かったが、明るい部屋で自分の手首を見た暁は、そこに残る縛られた痕と、後孔に尚も残る痛みと違和感に、あれは夢では無かったのだとようやく理解して慄然 とした。
その後……唯人からの連絡は無く、部屋にも姿を見せなかったが、次に会ったらどう接すればいいのか分からず、熱と痛みに苦しみながら、暁は必死に考えたけれど――。
(答え、なんて……)
学校を休んだ暁の様子を見に来てくれた優しい唯人と、暁の気持ちを見抜いた上で、玩具のように扱う唯人。
余りのギャップに混乱するが、考えてみても彼の心を探るなんてできやしない。
(もう三日も会ってない。もしかしたら……)
暁の気持ちが迷惑だから、あんな事をしたのかもしれない……と、どうしても考えは悪い方へと向いてしまった。
「白鳥君、ちょっといい?」
「あ、はい」
どうにかバイトをこなした暁が、帰りの支度をしていると、小泉に声を掛けられたから、彼の手招きに促されるまま従業員の出入り口へと荷物を持って付いて行く。
「あの、心配掛けちゃって……すみませんでした」
「そんな事はいいよ。それより白鳥君、顔色が凄く悪いけど、ちゃんとご飯、食べてる?」
「飯は……」
答えに詰まって視線をウロウロ彷徨わせると、こちらに向かって歩み寄ってくる彼の恋人の姿が見え、こんなに思って貰える彼が羨ましいと思うけれど、それは嫉妬や僻みではなく、小泉のような存在ならば当然だろうと暁には思えた。
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