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第31話
「ううん、痛くない。けど、唯、これは一体……」
ただならぬ雰囲気に、三人がどういう関係なのかを唯人に聞こうとしたが、弱々しい声は容易に須賀の声に遮られる。
「偶然だなんて、そんな都合のいい話があるわけ無いだろ? お前が何を企んでいるかは知らないが、また叶多に何かしようっていうなら、今度は法に訴える」
「強気だね。俺から叶多を取り上げておいて、偉そうに言ってくれる。でもまあ……疑われても仕方ないか。今は本当にお前らとやり合う気は無い。姿を見せるなと言うなら、暁にはバイトを辞めさせる。それでいいだろ?」
「……え?」
「それは、唯が決める事じゃない。唯は……まだ分からないの?」
勝手に話を進める唯人に暁が驚いて声を上げると、最初に言葉を交わしただけで、沈黙していた小泉が彼へと震える声で訴え掛け――途端、背後から暁を包む腕に強い力が込められた。
「叶多は……いつからそんなに偉くなった?」
耳許に響く静かな声。だけどそれは、腹の底が凍るような冷たさを含み、暁の背筋に悪寒が走る。
「僕は偉くなんかない。けど、白鳥君は友達だから、もし、唯が前みたいに……」
「うっ!」
そこまで小泉が話したところで、首の後ろに衝撃が走り、まるでテレビが消えるみたいに、暁の意識はプツリと切れた。
【壱 おわり】
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