34 / 188

第34話

「話って……唯と小泉さんが、同じ高校だったとは聞いたよ。あと、三人が話してるの見て、あんまり仲は良さそうじゃないって思った」  なるべく思った通り答えると、少し驚いたように唯人が瞬きを繰り返す。 「それだけ?」 「他に……なにかある?」  三人に何があったのかを……聞きたいのならば話すと言った須賀と小泉に、少し迷ったが否と告げたのは他でもない暁自身だった。  二日前、気を失ってしまった暁を、唯人の腕から奪い取り、そのまま連れて帰ってきたのは、心配だったからだと言われた。  首に付けていたチョーカーには、御園の紋が(かたど)られていて、多分GPSの端末が埋め込んである筈だとも。 (なんで、唯は……そんなことを?) 「別に……ただ、俺が連れて帰ろうとしたのに、不意打ち食らって連れて行かれたから、アイツ等に何か吹き込まれたんじゃないかって思っただけ。それに、暁から連絡来ないから、心配もしてたんだ」  フワリと体を抱き締められて、暁の体がピクリと震える。耳朶へ唇が触れるくらいに近くで紡がれた唯人の声に、胸がキュッと絞られるような、そんな感覚に包まれた。 「ごめん。連絡すれば良かった。俺、そこまで頭、回らなくて」 「うん、暁、体調悪かったもんね」 「そう、熱が下がらなくて、だけど……もう良くなったから、心配かけてホントごめん」  小泉達から何を言われたと思ったのか? と、尋ねたくなるが、暁は言葉をグッと飲み込み唯人の肩に顔を埋める。仲が悪いのを知っているだけに、不用心な発言をして、彼の気持ちを逆撫でしてはいけないと思ったのだ。 (そういえば……唯はいつも、バイトの話を聞きたがった)  それに、バイトを探していた暁に、ここはどうかと薦めたのも……。 (疑っちゃダメだ)  不意に過ぎった過去の記憶に、暁は必死に蓋をする。本当は、彼らと唯人の関係を、教えて欲しくて溜まらなかった。  チョーカーをわざと忘れたのも、疑っている自分が確かに存在している証だったが、彼の温もりに直接触れ、心配してたと言われた今……目の前にいる唯人の言葉を信じたいと暁は思う。

ともだちにシェアしよう!