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第43話
「暁は今日バイトだっけ?」
「ううん。今日は無いけど、夕方から用事があるんだ」
店へと入り食券を買い、カウンター席へ並んで座ると、すぐに唯人が聞いてきた。
「なに?」
「母親が研修でこっちに来るから、一緒にホテルに泊まってくる。前に話してたと思うんだけど」
「ああ、言ってたの今日だったんだ」
バイトのシフトまでは告げてないが、いつ呼ばれるか分からないから、大切な予定は普段の会話で彼に話している。
唯人の予定は聞けないけれど、毎日呼ばれる訳じゃないから、きっと忙しいのだろうと暁は勝手に想像していた。
(必要な時だけ呼ばれるって、まるで……)
セフレみたいだと思うけれど、彼とセックスはしていないから、やはりゲームという呼び方が一番相応しいのだろう。
(でも、こうして普通の友達みたいに……)
「暁のお母さんって、どんな人?」
「え? どんなって……普通だよ。でも、一番の理解者っていうか……家、父親いないから、母さんが母親で父親って感じかな」
「そうなんだ。きっと暁は愛されて育ったんだね。だからこんなに真っ直ぐなんだ」
「そんなこと……ないよ」
初めて家族の事を話して気恥ずかしくなった暁は、唯人の家庭の事も聞いてみたいと思って口を開くが、何となく変わった空気を感じて言葉を飲み込んだ。
すぐに頼んだラーメンが来て、雰囲気は元に戻ったけれど、彼には触れてはいけないところが沢山あると肌で感じているからこそ……不用意には踏み込めない。
(前は、それで良かったけど)
最初は側にいられるだけで満足だった筈なのに、どんどん彼を知りたくなり……だけど、やっぱり尋ねるだけの勇気はなかなか持てないままでいた。
(欲張ったら、嫌われる?)
暁の気持ちを知った上で、側へと置いてくれるだけでも奇跡のようなものなのに、彼と過ごせば過ごすほど、抑えが利かなくなりそうで――。
「じゃあ、明日バイト終わったら、家においで」
「いいけど……バイト、終わるの十一時だよ」
「構わない」
明日のバイトの予定を話した記憶は定かじゃなかったけれど、断る理由は勿論無いから、「分かった」と暁は答えた。
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