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第45話

「それで、暁は友達出来たのか?」 「小学生じゃないんだから、そんな質問しないでよ」 「で、出来たの?」  今は、彼がどうしても来てみたかったというレストランで、少し遅めの夕食をとっている。 「いるよ。友達くらい」 「それは良かった。で、オジさんには会わせてくれないのか?」 「いちいち友達紹介するような年じゃないだろ」 「それもそうか。もう暁も大学生だもんな」  伸ばされた手に髪を撫でられても振り払ったりはしなかった。憎まれ口を叩いてみても、暁はこの叔父が好きなのだ。  背が高く筋肉質で一見(いか)つく見える睦月だが、笑顔になるとその優しさが表情に滲み出る。  漁師という職業柄、夏期はほとんど丘にはいないが、冬の長期休みは必ず暁と一緒に過ごしてくれた。 「東京って所はホント落ち着かないな。どこに行っても人がいる」  テーブルごとに仕切られてはいるが外を見やれば整えられた庭にも人が歩いていて、確かに最初は暁自身、落ち着かなかった事を思い出し、クスリと笑うと睦月にコツンと額を指で弾かれる。 「痛っ」 「お前だって田舎者なんだからな」 「違うよ。そういう意味で笑ったんじゃない。ここは、人が沢山居るから、俺も最初は落ち着かなかったって思い出したんだ。でも、誰も俺を知らないから……気が楽だよ」 「なるほど、そういう事か。で、暁は楽しくやれてるのか?」 「うん、バイト先にも学校にも、多くはないけど友達が出来た。だから、心配いらないって母さんに言って」  これは……強がりではない本心だから、はっきりとした口調で言えた。バイト先の小泉は、自分を友達と言ってくれたし、大学ではいつも唯人が一緒に行動してくれている。 (唯は、俺がゲイって知った上で、友達になりたいって……言ってくれた) 「そっか。俺、大事な時に側にいてやれなかったから、ずっと心配してた。姉さんから話聞いたけど……辛かったな。じいさんの事も……」 そこまで話したところで頼んだ料理が席へと運ばれたから、飲み込むように言葉を止め、睦月は「食べろ」と告げてきた。

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