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第47話
「まあ、それ以来連絡も無いみたいだけど……思い出させて本当に悪い」
「ううん。ちょっと驚いたけど、もう昔の事だから」
本当はかなり動揺したが、なんとかそれを取り繕い、暁が笑みを浮かべて告げると、きっと空気を読んだのであろう睦月が話を変えてきた。
「そうそう、暁、東京に出て垢抜けたよな」
「え? そんなことないと思うけど」
あからさまな話題変更に吹き出しそうになるけれど、暁はどうにかそれをこらえる。彼の優しさはくすぐったいが、今はそれが有り難い。
「いや、絶対変わったよ。服とか……雰囲気がちょっと大人っぽくなった。いい意味で」
「いい意味って言われても……睦兄に言われるとなんか嘘っぽい」
「お前にお世辞なんか言わないさ。なあ暁、もしかして……」
「何?」
珍しく言葉に詰まり、迷うそぶりを見せた睦月に、尋ね返すと彼は暫し考えるように黙ってから、「恋人、出来たのか?」と、小さな声で聞いてきた。
「へ?」
思わず声を上げたところで、地下鉄は浅草駅のホームへと到着する。
「図星だな」
「睦兄、違うっ、違うから」
「いいよ隠さなくて。顔真っ赤だし」
思わぬ方向に話が進み、焦った暁は否定するけれど、地下鉄から降り歩き始めると更に話は飛躍した。
「その服選んでもらったんだろ? 良いセンスしてるよ。で、どこの人? 大学? バイト先?」
「だから違うって。友達だよ、これ選んでくれたの」
「友達?」
「うん、昨日話したろ。大学の……友達」
「ふうん。で、暁はソイツが好きなんだ」
昔から勘が鋭い睦月をこんな時……誤魔化すスキルは残念ながら持ってない。自分の耳が熱くなっている自覚もきちんとあるだけに、仕方なく暁は睦月だけにしか聞こえないような小さな声で「うん」と短く返事をした。
実際、暁の家にある洋服は、唯人から買って貰ったものばかりだ。
断る隙すら与えて貰えず、持っている洋服は全て捨てるようにと言われてしまった。
(あの日……からだ)
唯人の部屋へと初めて行った日。
嵐のような時間が過ぎ、なんとか立てるようになった暁が、帰ろうとした時には既に洋服は処分されていて――。
「上手くいくといいな」
ポンと頭を軽く叩かれて胸が少しだけ軽くなった。男しか好きになれないことを告げた時からそうだったけれど、睦月は暁の性癖についておかしいと言った事がない。
「多分、無理だけど……でも、今、傍 にいれるのが嬉しいっていうか、それだけで胸がいっぱいなんだ」
「そうか。俺はお前が幸せなら何だっていいんだけどさ。でも、あんま無理すんなよ」
のぞき込むように笑顔を向けられ更に羞恥は募ったけれど、太陽のように明るい彼に、つられて暁も微笑んだ。
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