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第56話

「で、暁はどうして会いたくないの?」 「……それは、言えな…うぅっ!」 「言えたらここ、一杯触ってあげる。言えるよな?」 「唯……あっ、ああっ!」  低く囁く声と同時に前立腺を強く押され、射精感に戦慄(わなな)くけれど、顎から離れた片方の指がペニスの根本を強く掴んで、寸前で熱を塞き止めた。 「暁、教えて」 「や、あぁっ……ゆび、離し……イきたいから」 「いいよ。暁が素直になったら、好きなだけ達かせてやる」  後孔を犯す2本の指がバラバラと中で蠢くが、今度は肝心な場所には触れず、焦らすように暁を追い詰める。 「んっ、くぅっ……言えな……言いたく…ない」 「強情だな。まあ、その方が愉しめる……か」  喉を鳴らして笑う音。  言いたくないし、聞いたところで面白くも無いだろうに、何故なのかと考えるけれど、きっと大した意味など無い。ただの遊びの一環だ。 「やだ……やだ」 「いいよ。暁が言えるまで付きあうから」  甘く響いた唯人の声に、何故かわ(まなじり)が熱くなる。  それから……結局暁が陥落するまで、達する事は許されず、混濁した意識の中で泣きながら全てを話し終えた時、背後から伸びた彼の腕へと抱き締められた気がしたが……絶頂の中で意識を落とした暁には確かめようもなかった。  *** 「なあ暁、大事な話があるんだ。少しでいいから時間作ってよ」  偶然会ってしまった時から、樹は暁のアルバイト中、頻繁に店へ足を運ぶようになってしまっていた。  無視を決め込んで黙っていると、「また来る」と告げ立ち去るけれど、精神的な負担は決して小さな物とは言い難い。  いっそ怒って『二度と来ない』と、言って貰えれば有り難いと思いもするが、これだけ通い詰められると……彼が何を話したいのか正直気にもなりはじめた。

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