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第58話

(多分……)  以前、行為中『似てる』と何度か唯人が呟いていたのは、きっと小泉の事だと思う。  当時は訳が分からなかったが、あの夜の彼らの会話から何となく想像がついた。想像だけで決めつけるのは良くないことだと分かってはいるし、暁は小泉のように綺麗な面立ちをしてる訳でもないが、背格好や雰囲気が似ていると周りからは良く言われている。  彼らの間に何があったかは今も聞けないでいるけれど、敏感とは言えない暁でも、唯人が小泉に執着している事にはちゃんと気づいていた。 「大丈夫、無理はしてないです。彼にもちゃんと話をして、もう来ないようにって言うつもりです」 「ならいいけど、一人で会うのが不安なら、付き合うよ」 「ありがとうございます。有り難いけど、今日は一人で行きます。アイツも話があるだけだって言ってたし、すぐに済むと思うんで。もし、何かあったら、よかったら相談に乗ってください」 「勿論だよ」  ふわりと笑う彼が眩しくて、暁は瞳を少し細める。  こんなに良くして貰っているのに、何故か胸がズクリと痛んだ。  僅かに芽吹いたその感情の名前を暁は知っているが、それ以上に小泉の事が好きだから、深く考え過ぎないようそっと思考に蓋をした。  *** 「お疲れ、どこ行く?」  バイトを終えて外へ出ると、樹がそこで待っていた。いなければ良いと思っていたが、流石にそれは口には出せない。 「ファミレスでいいだろ?」  小泉達に挨拶をしてから、樹に答えて歩き始めるが、「それじゃダメだ」と声が掛かって暁は一旦足を止めた。 「あまり周りに聞かれたくない。カラオケボックスでいい?」 「そう思ってるなら、最初から聞かないで言えばいいだろ」  振り返ってからそう言い募ればスッと掌を前に差し出し、「まあ落ち着けよ」と困ったように告げてくる。

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