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第59話

「暁、変わったな。キツくなった」 「お前にだけだ。それに、中学からろくに喋ってないだろ」 「まあそうだな。とりあえずカラオケ行こう。話はそれからだ」 「……分かった」  ここでくだらないやり取りをしても埒があかないと思った暁は、頷いてから近くのカラオケボックスへ向かい歩きだした。  話はすぐに済むと言うから一時間で良いだろう。時間がきちんと決まった方が、こちらとしてもやりやすい。 「夕飯食ってないだろ? 好きなの頼んでいいよ。今日は奢るから」  受付を済ませ部屋に入ると、開口一番そう言われ、暁が固辞すると今度は勝手に料理を色々注文された。 「暁、益々細くなった気がする。ちゃんと食わないと倒れるぞ」 「樹に心配して貰わなくても、ちゃんと食ってるから平気だよ」  向けられる優しげな笑みに、心の中がジクジクする。  彼と離れる切っかけとなった事件を思い出すだけで、胸は軋み苦しくなるが、中学以来ろくに会話をせずにここまで来ていたから、懐かしさに似た感情も胸の奥から僅かにわき出してきた。  なにせ樹は幼なじみで、暁にとって初恋の男だ。 (気付かれてはいないだろうけど) 「話って何?」  頼んだ料理が運ばれてすぐに、暁は話を切りだした。樹のペースに乗せられる前に話を終わらせ帰りたい。 「ああ。暁に嘘ついてたこと、ちゃんと話そうと思って」 「嘘って?」 「三宅のじいさんのこと。この前死んだって聞いて……それで、暁に本当の事を話したいって思ったんだ。こんな話をしても、暁が辛かった事に変わりはないし、俺が楽になりたいだけって思うかもしれない。実際そうなんだろうけど……それでも、どうしても聞いて欲しい」  真剣な樹の表情を見て、暁はコクリと唾を飲む。  話づらそうに唇を幾度か開閉させる彼の姿に、続きを急かす気にもなれず、暁は次の言葉を待った。 「あの時、暁の噂を流したのは、俺じゃない」 「それは……どういう?」  一分程の逡巡のあと、沈黙を破った樹の口から放たれた告白に……瞬時には意味が理解出来ず、(いぶか)しむように瞳を細めた。

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