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第69話

 *** 「唯人様、私が……」 「いい。俺が運ぶ」 「ふぅっ……ん」  使用人からの申し出に、短く言葉を返した唯人は、布地で包んだ暁の体を抱えて車の外に出る。  その際……暁は多少の抵抗はしたが、媚薬によって与えられる快楽の方が強いのか……ピクピク体を震わせながら、必死といった様子で唯人に華奢な体を擦り寄せてきた。 「声を掛けるまで食事はいい」 「承知しました」  そう一言命じ、頭を下げる使用人達の間を通って部屋へと向かう。  豪華ではあるが落ち着きのある趣を持ったこの屋敷は、何度か改築されてはいるが、戦争前に建てられた物で、アンティークなその外観はまるでホテルのような佇まいだ。  広大な庭園には、薔薇を初め季節の花々が色とりどりに植えられている。 「まあ、ゆっくり見てる暇は無いだろうけど」  複数ある別荘の中、唯人がここを選んだ理由は、東京から近いというその一点だけだった。  同じ地域には数年前に叶多を閉じ込めた施設もあるが、今回は勝手が違い三日だけしか時間がない。 (身寄りが無ければもっと良かった)  最初暁を見つけた時、なんとなく叶多に似ているという印象を唯人は持った。近づくために彼の行動を見張らせたのも、叶多の代替品になればいいと思い付いたからだ。 「暁、大丈夫?」  部屋へと入り、整えられた天蓋付きのベッドの上へと暁を降ろして優しく問うと、言葉を取り上げられた彼は、涙を流して唯人を見た。 その瞳に、反発の意志は微塵も無い。  あるのは状況への戸惑いと、深い色をした艶だけだ。 「んっ……んぅ!」 「イきたい?」  布を取り払いそう問いかければ、弱々しくだが頷いた。  足首に引っかかっているだけのジーンズを脱がせ下着を降ろすと、その刺激だけで達っしたのかペニスが小さく脈を打つ。

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