＊＊＊ 『暁、印(しるし)付けていい？』 　先日軽井沢へと行った際、唯人からそう問われた時、精神的に暁は追い詰められていた。 　なにせ、二度も水中へ沈められたのに、何事も無かったように一緒に風呂へと入っている。 　それだけでかなり緊張するのに、彼の真意も分からない。 『しるし……って？』 　背後から抱え込まれるように浴槽へと入った暁は、振り返ることも出来ないままに、細い声音で問い返した。 　素肌がここまで密着するのも初めてで、熱が顔へと集中する。 『俺の物に付けるって話さっきしただろ？　だから、暁にも付けたい』 　甘く囁く低い声音は、浴槽の反響によって、弱った暁の思考回路を毒のように侵食した。 『ど……どうやって？』 『焼印は前にやったけど、時間が経つと薄くなるから……』 『え、あっ……』 『この辺だったら、人に見られる事は無い』 　閉じていた脚を左右に大きく開かれ暁はビクつくが、お構いなしに唯人の指が内腿へと這わされる。 『嫌？』 　もう片方の彼の指先が、亀頭を軽く突っついてからリングピアスを摘み上げた。 『んぅっ…ゆい、そこ…触らないで』 『痛かった？』 　昨日散々ブジーを使っていたぶられた尿道口は、赤くかぶれて用を足す時も染みるような痛みを覚える。 『……たい、ゆい、痛い』 　頷きながらそう訴えると、指はあっさりと離れていき、今度は左右の胸の尖りを、円を描くように撫でてきた。 『う…くぅっ……ん』 『焼印の方がいいなら、そうするけど』 　どうする？　と尋ねる声が、腰の辺りへと響いて疼く。 　胸を弄ぶ指は止まらず、堅くしこった先端部分を爪で弾かれ体が跳ねた。 『あっ、や……』 『暁、凄く感じ易くなった。もうここだけで達けそうだ』 『ふっ……くぅっ』 　感じるのは当たり前だ。好きな相手と何も隔てずに触れ合っているのだから……更に、尾てい骨の辺りには多分彼の昂りが当たっている。 　勘違いかもしれないけれど、自分の体に彼が反応を示していると思うだけで、泣きたいような悦びに包まれ、暁は軽く眩暈を覚えた。 『暁、ダメ？』 （焼印……誰に？） 　再度問われた暁の頭に、ぼんやりとした疑問が浮かぶ。