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第100話

「や…ふぅっ…うぅっ」 「気持ちいい?」  達しても尚、指で尖りを弄びながら尋ねる唯人に、「も……やめて」と言葉を返せば、陰嚢を強く掴まれた。 「い゛ぃっ!」 「腰、揺れてる。気持ちいいんだろ?」 「い…いたい。ゆい、いたいっ」 「聞かれた事に答えろ」 「……もちいい、気持ちいい……あっ…やぁっ!」  求められた言葉を返せば、急所は解放されたけれど……次は後孔へ指を挿し込まれ、迷うことなく前立腺を叩くように刺激される。 「ひっ……あうっ!」 「そう。なら今日は、出なくなるまで付き合うよ」  再び頭をもたげ始めた暁のペニスを指で撫で、そう告げてくる彼の微笑みは、艶を纏い、息を飲むほどに美しく……暁は思わず状況を忘れ、その表情に魅入られた。  色素の薄い唯人の瞳の奥へと潜む狂気の色に、本能的に気付いてはいるが、逃げたいなどとは思わない。 (そう、だって……俺は……) 「うれ……しい」  考えるより言葉が出た。  唯人の瞳が自分を通して他を見ていると分かっていても、器としての価値しか無くても、今この瞬間彼の目の前に存在するのは暁だけだ。 「ゆい、んっ……くぅ! あぅっ!」  暁の言葉には反応せずに、猛ったペニスでアナルを一気に穿った唯人は、そこから暁が意識を落とすまで言葉を一切発しなかった。  最初に宣言した通り、出す物が尽きてしまってあとも暁への行為は止むことなく、折角綺麗に洗った孔も、唯人の精液で再び満たされ――。  ただ、薄れてゆく意識の中で唯人が漏らした舌打ちが……やけに大きく鼓膜を揺らし、暁の心を不安にさせた。  *** 「少し休憩しますか?」  きりの良いところで課題の手を止め軽く伸びをしていると、正面の席でノートパソコンを開いていた工藤が小声で訊いてくる。 「いえ、今日はもう終わりにします」 「そうですか。分かりました」 「あ、でも、工藤さんがまだなら……」 「私のことは気にしないで下さい。貴方(あなた)の付き添いが仕事ですから」  笑みを向けながらそう告げられ、申し訳ない気持ちで一杯になるけれど……これ以上暁が何か言っても(わずら)わせるだけだから、 「ありがとうございます」 と答えて荷物を手早く纏めた。

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