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第119話

「……」 「今度はダンマリ?」  脱ぐという行為について選択肢を与えられても、どちらかを選ぶなんて暁には到底出来やしない。  何故ならば……下肢を晒すという事はーー。 「無理……です。借金は、なんとかします。だから、それだけは……ぅっ!」 「俺さ、嘘吐きは嫌いなんだよ」 「ーーっ!」  唸るような低い声。同時に首へと掌が掛かり、気道を徐々に圧迫された。 「アキは今、言うこと聞くって約束したばかりだよな」  ヒュッと小さく喉が鳴る。  酸素を上手く取り込むことが出来ない身体が痙攣し、無意識のうちに手首を掴んで引き剥がそうと爪を立てれば、口元だけに浮かべた笑みを彼は更に深くした。 「無駄。もう一度だけ言うよ。簡単なルールだから、出来のいいその頭にしっかりと刻みつけろ。俺に……逆らうな」  もしも悪魔が実際に居たら、こんな容姿なのかも知れない。  息がとうとう出来なくなり、徐々に狭まる世界の中で、打ち上げられた魚のように口を開閉させながら……頷き返す余力もないまま、そんなことを暁は思った。  殺されるかもしれないという恐怖すら、感情が麻痺したみたいにその輪郭を失っていく。 「おい、その辺にしとけ」 「殺さないよ。大事な金づるだろ? 分かってるって」  嗜めるような佐伯の声に、答えた男がようやく首から手を離し……意識を飛ばしかけていた暁は、急に肺を満たした空気を吸い込みすぎて咳き込んだ。  抵抗する気力を殺がれ、ジーンズに彼の指が掛かっても、何の反応も返せない。 「へえ……見かけによらず、凄い物、つけてんじゃん」  器用にズボンを脱がせた彼は、暁の両脚を大きく開き、そこへ付けられた印を見付けて愉しそうに呟いた。  彼に呼ばれたカメラの男が、ベッドへ乗り上げ至近距離でその部分を撮り始める。 「かなり愛されてるみたいだな」 「……」  内太股の桔梗をなぞられ、気持ち悪さに鳥肌が立つが、反論すればまた暴力を受けると思えば、動くことすらできなかった。 「くっ……うぅっ」  次は……ボクサーパンツへ指が掛かり、暁は掌で顔を覆う。 「パイパンにピアスって……どんだけ執着してるんだよ。ちょっとウケるんだけど」  息を飲むような気配のあと……嘲笑(ちょうしょう)を浴びせた男は、萎えたペニスの先に付けられたリングを指で摘まみ上げ、それを前後に揺さぶりながら、「こっちを見ろ」と命じてきた。

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