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第120話

「アキのこと、気に入ったから、あんま痛くしないでやるよ」  怖ず怖ず顔から掌を外し、下肢の方にいる彼を見やれば、綺麗な顔に微笑みを浮かべ声をかけてくるけれど、その奥にある狂気を既に刻みつけられた暁にしてみれば、そんな表情を向けてもらっても余計に恐怖が煽られるだけだ。 「ここは、ありがとう……だろ?」 「いっ……あり…がと……ござい…ます」  捻るようにピアスを引かれ、必死に言葉を絞り出す。と、一旦ペニスを解放してから暁の上体を起こした男が、背中を支えるように背後へと回って暁の脚を掴んだ。 「カメラに向かって“いやらしい場所を見てください”って言えよ」  肩へと顎を乗せてきた男が、耳朶を噛みながら囁いてくる。 「ひっ……」  両の膝裏を持ち上げられ、まるで子供に小用をさせる時のような格好に……暁は小さな悲鳴を上げるが、勿論止めては貰えなかった。 「言え」 「……みて、やらし……とこ、みて……ください」  目下のカメラが、舐めるように自分を撮るのに耐え切れず、暁が視線をそこから逸らすと、 「ちゃんと見ろよ」 と命じる声。  震えながらも視線を戻すと、その向こう側に佐伯が見え……射るような鋭い視線に背筋を冷たいものが這う。 「おい、前原、ボーッと突っ立ってねえで、これを、ソイツのアナルに挿れてやれ」 「へっ!? 俺が……ですか?」 「可哀想に、お前のせいでこんな目に合ってんだ。少しは楽になれるように、協力するのがトモダチってもんだろ」 「え……でも」 「やれや」  ドスの利いた佐伯の言葉に弾かれたように動いた樹が、慌てて佐伯の前まで行くと、何かを受け取りこちらへ来る。 「や……やめろっ」  樹の手に握られている注射器のような道具を見て、恐怖に駆られた暁は上擦った声を上げるが、樹は首を横に振る。 「暁が悪いんだ。変な目で、俺を……見るから、だから俺は……」  まるで、自分に言い聞かせるかのようにブツブツと呟く樹の目は、焦点が定まっておらず、正気を無くしているように見えた。 「さっさとやれよ」  背後から急かす佐伯の声に、樹はビクリ体を震わせ、注射器から延びているゴムの管をこちらへと向けてくる。 「いっ、いたい!」  まだなんの滑りも帯びてないそこに、管の先端を差し入れられ、引き攣る痛みに腰を捩れば、 「我慢しろ。男だろ」 と、背後の男に鼻で笑われ、知らず涙が溢れ出た。

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