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第123話

 廊下の一番突き当たりにある部屋の扉をそっと開くと、既に眠ってしまっているのか、中は静まりかえっていた。  足音を立てないようにゆっくりベッドへ近づけば、常夜灯のオレンジに包まれ寝息を立てる姿がある。 「……うっ…んぅ」  眠る暁の頬へと軽く指で触れ、唇へと移動させれば、擽ったいのか眉間に僅かな皺を寄せながら、反対側を向こうとした。 「暁」  唯人は低く囁きながら、薄い体を包み込み……猿轡を噛まされている唇にそっと口づける。  今、唯人を満たしている感情は、自分の物を壊された事への、憤り、憎悪、そして……。 『他の誰かに汚されちゃったから、もう要らない』  何年も前、自分が放った言葉が頭に木霊する。 「……許さない」  ポツリと呟くその言葉は、誰に向けての物なのか?  答えは既に見えているし、感情が上手く制御出来ない理由も分析出来ているが、どう処理するのが妥当なのかは未だ導き出せずにいた。 肆 おわり

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