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第129話
「ん……んぅ」
(起きたくない。起きたらまた……)
酷い仕打ちが待っている。
(もう、いや……だ)
暴力も、注ぎ込まれる快楽も、それに溺れる弱い自分も――。
「……うぅ」
額へと触れる冷えた感触に、暁はビクリと震えるが、誰がいるのか見るのが怖くてとても瞼は開けなかった。
いるのはエイジだと分かっていても、悪い夢だと思いたい。
(けど……)
「暁、目が覚めた?」
この感触は知っている。声も間違えようがない。
「ん……ぐぅ」
「もう安全だから、怖がらなくていい」
頬を包み込む掌に……思わず顔を擦りよせた。
怖ず怖ず瞼を開いていくと、求めてやまない姿がある。
「うっ……うぅっ」
「待て。今外すから」
そう告げてから、綺麗な笑みを浮かべた唯人は、暁の口から猿轡を解き、汚れてしまった口の周りを、濡れたタオルで丁寧に拭った。
「あ……ゆ…い」
名前を呼ぼうと口を開くが、掠れた声しか出てこない。堪えきれずに咳き込めば……暁の上体を支えるように起こしてくれた唯人の手が、背中を優しく撫でさすった。
徐々に咳が落ち着いてくると、自分の身体が目に映り、そこで初めて暁は自分の体を襲った異変に気づく。
「……な…んで?」
白い包帯のようなバンドで、上半身と下半身がそれぞれ拘束されていた。
「パニックになって暴れるかもしれないから。でも、今はそんなこと気にしなくていい。少し不自由かもしれないけど、どっちみち暁は一人じゃまともに動けない」
「それって……どういう……」
頭が上手く働かず、聞き返すけれど答えは無い。よく見ると……上だけ着ているパジャマの裾から細い管が下へと伸び、左腕には添え木がされ、同じ左の手の甲からは、点滴の管が伸びていた。
「パニックって……」
「少し、水を飲んだ方がいい」
口篭りながら唯人を見るが、彼はそれに答えること無く、備え付けの冷蔵庫から水のボトルを取り出すと、キャップを開いて口に含んだ。
「っ……う…ん」
続けて、髪を掴まれ後ろへ引かれ、強引に口を塞がれる。何をしたいか分かった暁は、唇を開いて享受した。
「ん……んぅ」
口移しされる冷たい水を喉を鳴らして飲み込むと……終わったところで唯人の舌が、口内へ入り込んできたから、暁は『もっと』と強請るように、その舌先へと甘く吸いつく。
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