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第131話

 拘束を解き、パジャマのボタンを一つずつ外すその間……暁は細かく震えながらも、抗ったりはしなかった。  きっと無意識なのだろう……自由になった片方の腕で上半身を隠そうとするが、たった一言「動くな」と低く命じただけで、力の抜けた暁の腕がシルクのシーツ上へと落ちる。 「酷い痕。かなり気に入られたみたいだな」  白い肌へと無数に刻まれた咬み痕を指の腹でなぞり、首へとくっきり付けられた縄の痕を両手で軽く絞めると、まるで電気を流したみたいにピクッピクッと痙攣した。 「アッ……アァッ」 「これだけで、イけるように躾けられた?」  排泄用に挿入しているカテーテルへと視線を移すが、膀胱へと繋がる管には何の液体も流れていない。  ただ、薄く上気したその頬と、拙く揺れる腰を見て……暁がドライで達したことに気づいた唯人は溜息をついた。  暁が、依存性の高い薬剤を使われたのは知っている。  だが、虚ろに天井の白を見上げ、喘ぐ彼の脳内にいるのが、自分ではなく他の男というのは気持ちの良いものじゃない。 「なあ暁、アイツのところに戻る?」 「んっ……んぅ」  その一言で……意識を遠くへ飛ばしかけていた暁の瞳に色が戻り、駄々をこねる子供のように大きく首を左右へと振った。  駆け引きめいた言葉を紡ぐ自分で自分に驚くが、これが嫉妬という感情だと唯人は瞬時に理解する。 「工藤には安静にって言われたけど、無理みたいだ」  どうやら針を刺されたらしく、ボッテリと腫れた乳首を舐め、それが硬くしこったところで犬歯を立てて軽く噛んだ。 「ふっ……んぐぅっ!」 「暁、ここにも印、つけていい?」  囁きながら尖りを引けば、華奢な体は跳ねあがり、猿轡で戒められた唇の端から、唾液が頬を伝い落ちる。  それでも……必死に唯人の顔を見つめて頷き返す健気さに、心を占める苛立ちや怒りがほんの僅かだが薄れた気がした。  *** (唯、唯……)  腕を伸ばして縋りたいのに、行動には移せない。  拘束されている訳ではないが、唯人の言葉は絶対だから、破ることなんて出来なかった。 「んっ……ぐぅっ」  肩口や鎖骨に歯を立てられ、痛みに悲鳴が上がるけど、猿轡を噛んでいるお陰で弱音は聞かれなくて済む。

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