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第137話
***
『失礼』
撮影が始まってから随分と時間が過ぎていたから、開け放たれたドアの向こうに工藤の姿が見えた時にも、それが誰だか分からないくらい深い快楽に溺れていた。
背面座位の体勢で、エイジのペニスを受け入れた暁は、左右に開いた膝裏を持たれ激しく上下に揺さぶられながら、撮影しているカメラに向かって強要された言葉を紡ぐ。
『あ、あぁ…ん。きもち…いい、もっと……』
『そこまでにして頂きましょう』
『……思ったよりも早かったな』
冷たく響く工藤の声と、それに答える佐伯の声。
続けて『止めろ』の声が聞こえて、エイジの動きがピタリと止まった。
『あっ…やっ……うごいて…』
『欲しいなら、自分で動いてみな』
耳朶を犬歯で甘く噛まれ、艶を纏った喘ぎが漏れる。
暁は小さく頷き返すと、解放された足をベッドの上へとつき、拙く腰を振り始めた。臍の奥からわき出す疼きに理性がほとんど働かない。
『御園の坊っちゃんの側近だな。一人で来たのか?』
『ええ。しかし、30分経っても私が戻らない場合、警察が突入する算段は付けてあります』
『ハッタリだろ?』
馬鹿にしたようなエイジの声を、軽く手を上げた佐伯が制する。
『違うな、ハッタリなんかじゃない。御園が動けば警察はすぐ動く。だが、先に動かせばソイツの姿を奴らに晒すことになる。だから……1人で来た。違うか?』
『さあ、どうでしょう』
飄々と答える工藤に、佐伯が喉を鳴らして笑った。
『それだけそこの貧相なガキが、坊ちゃんには大切って訳か』
『坊ちゃんがハマるの分かるぜ、コイツ、反応も具合も最高にイイし』
『んぁっ、ああっ!』
声と同時に肩を上から押さえつけられ、最奥までを穿たれた暁は、もう何度目になるか分からない絶頂を迎え打ち震えた。
『あ……んぅ』
その余韻を味わいながら、唇へと宛がわれたエイジの指へと舌を絡め、それをねっとりと舐めしゃぶるうち、ようやく焦点が定まってくる。
『今すぐに連れて帰ります。映像が取引材料だというのであれば、どのメディアからも流出させないよう。万が一破られた場合、相応の報復を以て対応しますので』
抑揚を極力殺した低い声は、常の工藤と全く様子が違っていた。
そんな工藤の鋭い視線が真っ直ぐこちらへ向けられた刹那、虚ろだった暁の瞳に理性の光が微かに射しこむ。
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