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第141話
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「こうやって、一緒にご飯食べるのも久しぶりだね」
「はい。今日は誘ってくださって、ありがとうございます」
目前の席へ座る小泉に緊張しながらそう答えると、
「そんなにかしこまらなくていいよ」
と笑みを向けて告げられた。
季節は秋。
夏に負った傷もあらかた癒え、アルバイトへと復帰してから一ヶ月程が過ぎている。
「ホント、心配してたから、元気そうで良かった。ねえ、白鳥君……単刀直入に聞くけど、何があったの?」
運ばれてきたソフトドリンクで、形ばかりの乾杯をすると、まわりくどい詮索はせずに小泉がそう尋ねてきた。
「何って……特に、何も……」
予想していた質問だけど、長い睫毛に縁どられた目に憂慮の色を浮かべられると、今まで散々シュミレーションした嘘も吐けず、暁は言葉に詰まってしまう。
「何もなかったじゃ済まないよ。二ヶ月もバイト休んで、出てきたと思ったらまた痩せてるし……」
眉尻を僅かに下げながら、そう告げた彼は言葉を切り、鞄から、ノートとペンを取り出し何かを書き始めた。
何をしているか気になったけれど、覗き込んで見ることもできない。
「今日は何時まで大丈夫?」
「12時までは平気です」
「……まるでシンデレラだね。でも、だったらゆっくり話せる」
何かを書く手は止めないままに、小泉がクスリと微笑んだから、つられて暁も頬を緩めれば、
「やっと笑った」
と、安堵したように呟いた。
今日は二人共バイトが休みで、まだ午後七時と時間も早い。
小泉から食事に行こうと誘われたのは昨日の事で、すぐに返事はできないと言ったら、アルバイトが終わったあと、唯人に電話で確認すればいいと言われて戸惑った。
これまで……自分の方から唯人に電話を掛けたことが無かったからだ。
それでも、暁にとって小泉の誘いは凄く嬉しいものだったから、駄目で元々と思いながらも電話をかけると、やけにあっさり了承された。
『いいよ。だけど、悠哉が来るなら俺も同席する』
電話越しにそう告げられたから、そのまま小泉に伝えると、考えるような仕草をしたあと『一人で』と、彼が答えた。
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