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第149話
「申し訳ありません。アレとは少々面識がありましたので、勝手な事をしてしまいました。出来れば私の預かりにして頂きたいのですが……」
「いいよ。工藤がなにかを欲しがるなんて珍しいからあげる。好きにしろ」
「ありがとうございます」
礼儀正しく頭を下げる工藤へと軽く頷き返し、「逃がすなよ」と付け加えてから暁を抱いたまま廊下へ出ると、二階部分へと繋がっている階段を上がり、いつもはほとんど使われていない奥の部屋へと足を進める。
「ここでいい」
鍵を使ってドアを開いた工藤に短く命じた唯人は、部屋の中へと足を踏み入れ、中央に設置されたベッドへと暁の体を横たえた。
「唯人様、白鳥君は……」
「分かってる」
何かを言いかけた工藤の声を、柔らかいけれど有無を言わせぬ雰囲気をもって制すると、それ以上はなにも言わずに彼は部屋を後にする。
「さて……と。どうしようか」
ドアを閉め、鍵をカチリと施錠してから、キングサイズのベッドサイドへと歩み寄り……そこに腰を降ろした唯人は、眠っている暁の喉元を掌でそっと撫でながら、唇だけに笑みを浮かべて淡々と呟いた。
***
「暁、口開けて」
言われて唇を少し開くと、匙で掬った小量の粥が口の中へと差し入れられる。
促されるままそれを飲み込めば、次の一口を差し出され、何度かそれを繰り返すうちに暁は吐き気を催した。
「うっ……」
「もう終わり? 暁はホント、食が細いな」
心配そうに響く声。
優しく頬を撫でる掌。
そんな様子はいつもの唯人と全く変わらないけれど、暁を取り巻く環境は前とだいぶ変わってしまっていた。
「はい、飲んで」
渡された水を一口飲み込み、部屋の中を見渡せば……綺麗だけれど無機質な、まっ白な壁に黒い家具。
モダンと言えばそうなのだろうが、ずっとこの空間にいると、全てのものがモノクロになってしまったような錯覚に陥る。
暁の目の前で色彩を放つ、唯人ひとりを除いては。
「唯、ここは……どこなんだ?」
「ん? 今は内緒」
何度か交わされたやりとり。
ダイニングで気を失った暁が、次に意識を戻した時には、すでにここへと寝かされていた。
さらに、衣類は全て取り払われ、足首に枷がはめられていて、そこから伸びた長い鎖がベッドの脚へと繋がれていた。
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