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第159話
***
「……っ!」
深い眠りから目を覚まし、おそるおそる瞼を開けば、信じられない光景に……思わず息を飲み込んだ。
(寝て……る?)
先日は狸寝入りだったから、もし本当に寝ているならば、眠っている彼の姿を初めて見ていることになる。
(綺麗……だ)
他に形容のしようがない。
筋の通った細い鼻筋と、伏せられている長い睫毛。薄い唇は口角に向かい緩やかな弧を描いているから、眠っていても薄い微笑を浮かべているかのように見え、まるで完璧な造形品を見ているような気持ちになった。
微かな寝息が聞こえてくるから本当に寝ているのだろう。起こさないように息を潜め、まじまじと顔を眺めていたが、そのうちに暁は自分の下肢が疼いているのを自覚した。
「ん……」
「唯、ごめん。まだ寝てて大丈夫だから」
どうしようかと焦ったところで、唯人の瞼が薄く開く。暁はあわてて言葉を紡ぐが、彼は横へと首を振った。
「いや、もう平気。それより……暁に話があるんだ」
背中を抱いていた彼の掌が、髪の毛へと差し込まれ、そのまま顔を上向きにされて、唇を口で塞がれる。
「ふっ……うぅ」
はしたなく反応してしまっている下半身には気づかれまいと、暁は腰を引こうとするが……見透かしたように腰を掴まれ、強い力で引き寄せられた。
「勃ってる。いやらしいこと想像した?」
「ちがう、顔……見てただけ」
「じゃあ暁は、俺の顔に欲情したんだ」
啄むようなバードキスの合間にそう告げられて、言い訳なんて浮かばないし、それしか理由が浮かばないから、
「そうかもしれない」
と、暁は小さな声で返事をする。
「暁のそういう嘘に逃げないところ、好きだよ」
「唯っ」
太股の間に唯人の脚が入り込んできて、緩く股間を押してくるから、たまらず暁は名前を呼ぶが、止めるどころか空いている右手でペニスを握りこまれてしまった。
そのまま緩く扱かれれば、そこから生まれる愉悦にのまれた体が勝手に震え出す。
「っ……んぅ」
(どうして?)
唯人が何を考えているのか暁には想像できなかった。
これまでも……戯れ言のように“好き”と言われたことがあるが、それが恋愛感情などと自惚れた感情を抱いてはいけない。
(でも、こんな……)
淡い期待を抱いては、何度も打ち消し繋いできた。
なのに、まるで恋人にするみたいな甘いキスを繰り返されるうち、どう反応すればいいのか分からなくなってしまう。
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