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第160話

「……アッ」 「ちょっと待って」  亀頭部分のピアスを引かれ、たまらずあえかな声を漏らすと、唯人は一旦暁のペニスから手を離し、サイドボードの引き出しを開けて中からゴムを取り出した。  シーツを取り払われたことで、貧相としかいいようのない自分の体が(あら)わになり、暁は咄嗟に手で隠そうと身動ぎをするけれど、「動くな」と唯人に言われ、どうすることもできなくなる。  それに引き換えボクサーパンツを身に付けている彼の体は男らしく引き締まっており、余裕のない行為中や、風呂では直視できないでいたから、思わず魅入ってしまった暁の心拍数は自然と上がった。 「暁、どうしたの? 腰が揺れてる」  そんな暁の気持ちなど全て見透かしているくせに、質量を増してしまったペニスへ器用にゴムを被せながら、こともなげに尋ねてくるから、消えたいような気持ちになる。 「……ごめん」  いたたまれなくなった暁が、小さな声で謝罪をすると、上半身を起こした唯人が首を傾げ、 「なんで謝るの?」 と訊ねてきた。  それなのに、返事をする(いとま)も与えず唯人は暁のペニスを掴み、それを上下に揺さぶりはじめる。 「あっ、ああっ!」 「恥ずかしい? 体中、真っ赤だ」  愉しそうに響く低音と、巧みな手淫に翻弄され……暁のペニスは瞬く間に爆ぜ、ゴムに白濁の溜まりを作った。 「あ……ゆい、ごめ……」 「こうさせてるのは俺だろう? だから、暁は謝らなくていい」  こらえ性のない自分の体に羞恥はさらに募るけれど、唯人はそれをからかうことなく、後始末をしながら暁へと告げてくる。 「でも……」 「暁は……俺のどこがそんなに好きなの?」  さらに突然思いも寄らない質問を、真面目な顔で投げかけてくるから、一瞬呼吸を忘れるくらい暁の頭は混乱した。 「どこって、そんなの……全部……だ」  彼の考えが分からなくて、不安を覚える場面はこれまで数多くあったけど、それでも好きだという思いしか暁の中には存在しない。  だから、暁がそう返事をすると、唯人は首を傾げながら眉間に微かな皺を寄せた。 「大抵の人間が、初対面で俺に好意を持つのは分かってる。暁もそうだったろう?」  当然のように話しているが、唯人でなければ言えないような台詞だと暁は思う。だけど、実際にそうだったから、コクリと小さく頷き返した。  すると、上半身を起こしたままの唯人は暁の膝裏を掴み、内腿へと描かれている桔梗へと指で触れてくる。

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