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第171話

「は……あっ、好きじゃない……けど、ゆいが、したいなら、なんでも……」 「可愛いこと言うね」  痛いのが好きな訳ではない。だけど、唯人が与えてくれるものならばどんなことでも嬉しいと告げれば、耳の裏側へと舌が這わされ、陰嚢から離れた指が亀頭のピアスを軽く引いた。 「いっ、ああっ!」 「もうドライで達った? 暁はホントにこらえ性がないな」 「……ふ……んぅ」  脳天を抜けた強い愉悦に、膝から崩れた暁の頭上から、呆れたような唯人の声が降ってくる。 「アッ……アゥッ」  ペニスは戒められているから、射精することは叶わなかったが、オーガズムを迎えた体が打ち上げられた魚のようにビクリビクリと戦慄いた。  体を支える唯人の腕が離されてしまった訳ではないから、膝立ちになってなんとか壁へと縋りついている体勢だ。 「ここ、ヒクヒクしてる」 「んあっ……いたいっ」  休む間も無く亀頭を数回爪の先で弾かれて、痛いと暁は訴えるけれど、腰を引きながら「止めろ」と言っても解放される気配はない。 「嘘。痛いだけじゃないよな」 「ふっ……うぅ」  そればかりか、唯人によって散々開発されてきたそこは、すでに立派な性感帯と化していて、痛みを与えられたあと、指先で軽く擦られただけで腰がカクカクと揺れてしまった。 「小指、第一関節まで入ってるけど……こんなにされても気持ちいいんだ」 「……や、こわい、ゆい……抜いて……壊れ……る」  実際には……指先が少し食い込む形で圧迫されているだけなのだが、視界が無い暁の感覚は酷く過敏になっていて、唯人の放った嘘の言葉をすっかり鵜呑みにしてしまう。 「なんで? ここ、好きだろう? 全然萎えないし、嬉しそうにヒクついてる」 「わかんな……わかんないっ」  壁をカリカリと爪で引っ掻き、頭を左右に振りつつも、縛られているわけでもないのに、彼を振り払おうという考えは微塵も頭に浮かばなかった。 「……かわい」 「あっ」  囁いてくる唯人の声が、僅かに掠れているのが分かり、可愛いものかと思いながらも、体は余計に火照(ほて)ってしまう。  それから唯人は尿道口を指でクチクチとしつこいくらいに弄び、逃れることも出来ない暁は、身体をくねらせ悶えていたが、不意にペニスから掌が離れ、安堵に微かな吐息を漏らすと、休む暇もなく滑りを帯びた掌が胸へと触れてきた。 「んっ……くぅ」 「ちゃんと洗ってやるから、大人しくしてろ」  そう言い放つや大きな掌が弧を描くように暁の体を撫でまわす。いつもなら、スポンジを使って互いに体を洗いあうのだが、今日は全てを唯人の意思に委ねなければならないらしい。 「あ……んぅ」 「暁はホント、感じやすいな」  しかも、視界を奪われたこの状況は、いつもに増して暁の薄い皮膚を敏感にさせていた。 「ふっ……くぅ」  なにか、彼を怒らせるようなことを、してしまったかもしれないと……いまさらのように暁は思考を巡らせてみるけれど、思い当たる節がない。

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