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第180話

 *** 「暁、あーきっ!」  自分の名を呼ぶ声に弾かれ、暁がそちらへ視線を向けると、自動ドアの向こう側から満面の笑みを浮かべて大きく手を振る姿が目に入る。 「荷物取ってくるから、ちょっと待ってろ」  身振り手振りを加えて暁へと告げたあと、手荷物を待つ人々の中へと入っていく後ろ姿に、自然と笑みがこみあげるけれど、同時に暁の胸の鼓動はうるさいくらいに速くなった。 「今の人が叔父さん?」 「うん」 「暁に似てる」  肩へ掌を乗せられて、内緒話をする時みたいに耳元で低く囁かれれば、それだけで……顔へと熱が集中するのが分かるから、嬉しいけれど恥ずかしい。 「そうかな? 言われたこと無いけど」 「似てるよ。兄弟みたいだ」  間髪入れずに返事をされて、返答に困った暁は瞬きを何度も繰り返した。  上手く言葉を返せないのは、似ていると言われた事が不愉快だからという訳ではなく、緊張のあまり喋れないのだが、きっと分かっているのだろう……唯人も続きを促さない。  暁たちは今、春休み期間中だ。  事件からずっと唯人と一緒に暮らしている暁の元へと、冬の烏賊(イカ)漁を終えた睦月から5月に始まる鮭鱒(サケマス)漁の前に顔を見に行くとの電話が入ったのは、つい昨日のことだった。  すぐさま唯人に事情を話し、滞在する2日間は睦月と一緒にホテルに泊まると話したら、『いいけど、空港に迎えに行くなら、俺も行く』と言ってくれたから、一緒に迎えに来たのだが……。 (視線が、痛い)  人目を引く容姿をしている唯人と二人で歩いていると、様々な人がこちらを見るから、とにかく暁は落ち着かない。 「……睦兄、オジサンって言われるのがホントは嫌みたいだから、兄弟って言われたら喜ぶと思う。実際、兄みたいなものだったから」  とにかく、少しでも気を紛らわせるために会話を続けようと考え、先程の話題を持ち出せば、「そうなんだ。仲いいのは少し羨ましいな。俺にも弟がいるから」などと唯人が突然言うものだから、驚いた暁は思わず「え!?」と素っ頓狂(すっとんきょう)な声をあげた。

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