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第181話
「……初めて聞いた」
「話してなかったし、実は顔も見たことが無い。だから興味も無かったけど、暁が昨日嬉しそうにしてるの見て、ちょっとだけ、会ってみたいと思った」
「じゃあ、今度一緒に会いに行こう」
どんな事情で離ればなれに暮らしているのか知らないが、これまで自身の家族に対し、冷めた感情しか抱いていないと言い切っていた唯人だから、会ったことがないとはいえ、弟を気に掛けたのは良い傾向だと暁は思う。
一緒に暮らし始めてから、徐々に柔和な面の増えてきた唯人の変化を暁は嬉しく感じていた。
「ああ、そうだな」
唯人が返事をしたところで睦月がゲートを出てきたから、暁は小さく頷き返して睦月の側へと歩み寄る。
「睦兄、久しぶり」
「待たせて悪かったな。荷物がなかなか出てこなくて……暁、そちらは?」
「うん、前に話してた学校の友達。遊ぶ約束してたんだけど、睦兄が突然来るって言うから今日は一緒に来てもらったんだ」
きっと聞かれるであろうと考え、用意していた返事をすれば、
「初めまして、御園唯人といいます」
と、口元に笑みを浮かべた唯人が丁寧な挨拶をした。
「暁の叔父の睦月です。今日は予定を狂わせてしまって悪かったね」
それに答える睦月はどこか嬉しそうな表情を見せ、暁の方へ向き直ると、「いい男だな」と耳打ちをしてくる。
「いえ、お会いできて嬉しいです。それから……俺は、暁の友人ではありません。恋人としてお付き合いさせて頂いています」
「……えっ? 唯、それは、ちょっと……」
人の行き交う空港のロビーで話すような内容ではない。それに、唯人の立場を考えると、他人に伝える事でははないと暁は常々思っていたから、まさかの彼の発言に……口ごもるしかできなくなった。
「違うの?」
僅かに細められる双眸。怒らせたのかと不安になるが、その唇は、悪だくみをする子供のように綺麗な弧を描いている。
「暁、本当か?」
驚いたように瞳を見開き、睦月が暁へと尋ねてきた。
唯人にここまで言わせた自分が嘘を吐くなんて出来ないから、暁が頷き、
「うん、そうなんだ」
と声を震わせ伝えると……一瞬瞳を細めた睦月だが、次の瞬間笑顔になり――。
「そりゃ、すごい……そうか、暁、良かったな! おめでとう!」
と、行き交う人がこちらを見るくらい大きな声で告げてきた。
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