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第4話 ネガティブ思考発動中。

「ごめんね、あいつ良い奴なんだけど、ちょっと過保護でさ、俺が良く知らない人に話しかけられたりしちゃうから心配してくれたんだと思う」 「……」 「もしかして、まだ足が痛む?」  顔を覗き込まれ、ハッと我に返る。 「い、痛くないよ、大丈夫。俺、そろそろ帰らなきゃ。近所のスーパーが休みだったから、こっちまで来たんだ。帰りが遅いから母さんが心配していると思うし」 聞かれてもいない事までペラペラと早口で巻くしたててしまった。変に思われてやしないだろうか。 「帰っちゃうんだ……」 「うん」  彼の表情が僅かに曇る。もしかして、寂しいって思ってくれたのかな。 「じゃあ、明日は? 何か予定入ってる?」 「……へっ?」 「ふふっ、へ?って言うの四回目」 「あ、ごめ……え? 明日?」 「うん、明日はサッカーの練習が休みなんだ。もし君に……名前まだ聞いてなかったね。教えてくれる?」 「真咲、清河真咲」 「……清河……真咲?」 「うん」  特に変わった名前でもないのに、何でそんなに目を見開いているんだろう。嫌いな奴の名前と同じだったりするのかな。 「何処に住んでるの?」 「隣町だよ」 「近所のスーパーって米久?」 「知ってるの?」 「あの辺りに友達がいたんだ」  過去形って事は引っ越しでもしたのかな。誰とは聞かないでおこう。近所の子と遊んだりしていないから、名前を言われても反応がしづらい。 「俺は池内優磨。よろしくね」 「こ、こちらこそ、よろしくお願いします」 「明日、予定が入ってないんだったら、会おうよ」  明日、会おうって言ったように聞こえたけれど、まさかね……きっと幻聴だよな。喜んだ瞬間に目が覚めて夢落ちでしたのパターンもあり得る。うん。 頭の中で自己完結して頷いていたら、頬をきゅっと摘まれ、横にぐいと捻られた。 「痛っ!! 今、何で抓ったの?」 「んーー、これは夢だなって顔してたから、現実だよって教えてあげたくなっちゃった。俺の勘違いだったらごめんね?」  どうして俺の考えてる事が分かったんだろう。いや、仮にそうだとしても、普通は抓ったりしないよな。しかもあんなに力込めて。 「怒っちゃった?」 「怒ってはいないです」 怒ってはいないけれど、頬がひりひりする。 「敬語も癖なの? 時々使っているよね」 「テンパったり緊張したりすると、吃ったり敬語が出ちゃう時があるんだ。それで揶揄われたりもしてさ、話すのがちょっと苦手」 「真咲君は何も悪い事してないんだし、そんな事で揶揄う奴の方がおかしいじゃん。気にする必要なんてないと思うよ」 「優磨君は俺とは違うから、俺は君みたいにポジティブには考えられないよ」 「どこが違うんだよ? 真咲君は俺の何を知ってるの?」 「……」 確かに、俺は優磨君の事を何も知らない。でも、考え方からして君と俺とじゃ全然違う。外見だって……同じだとは到底思えやしないよ。

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