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第9話 自覚した想い。
今日は何日だ? あれから幾日経ってる?
「母さん! 俺が階段から落ちた日から何日経ってる?!」
「いきなり何よ?」
「教えて!!」
「あの日から? えーーっと、大雪が降った前日だから、三週間近くになるかしら?」
「大雪? 次の日に大雪が降ったの?!」
「ええ、まー君が入院した翌日の夜にね。救急で運ばれてきた子がいたから良く覚えているわ。 看護師さんから聞いたんだけど、隣町の土手づたいに空き地が有るでしょ? そこで友だちと待ち合わせしていたみたいで、大雪の中、ずっと待ち続けていたらしいのよ」
土手づたいの空き地……優磨君だ!!
「そ、その男の子、今、どうしてる?! 無事だったの?!」
「確か三日後に退院したのよ。同じフロアだったからご両親ともお話ししたんだけど、お父さんの仕事の都合で引っ越しをするみたいで、通院は別の病院でする事になったらしいわ」
「引っ越し?!」
「もしかして、知ってる子なの?」
「お、俺、出掛けてくる!!」
「えっ?! 叔母さんが退院祝いを届けに来てくれるのよ」
「すぐに帰って来るから!!」
家を飛び出し全速力で空き地へと向かう。
どうか、夢なら覚めて!! もしかしたら、これが夢なのかも知れない。きっと、そうだ。今日は約束の日で、俺はこれから彼に会いに行くところなんだ。
現実から目を逸らしたくて、愚かな妄想を抱きながら走り続けた。
空き地には誰もおらず、静寂に包まれていた。名前を呼んだが、返事が返って来る事はなく、彼が俺の前からいなくなってしまった現実を思い知らされただけ。
堪えていた涙が堰を切ったように溢れた。彼の名前を何度も泣き叫んだ。世界が滲んで見える。
俺はその時になって、ようやく、彼への想いを自覚した。
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