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第12話 君はいつから?

「優磨君、三年前の冬に……」 「まー君、おやつ取りに来てーー!!」 母さんの声で気が削がれてしまった。彼に話す決心をしたのに。 「真咲君、おばさんが呼んでるよ」 「ちょっと行ってくるね」 スナック菓子とコーラをトレーに乗せ部屋に戻ると、優磨君がクローゼットの前に立っていた。  彼が手にしているのは、あの日返す筈だった赤い色のマフラー。 「優磨君……」 「まだ、持っていてくれたんだね」 「い、いつから気付いていたの?」 「転入初日から、真咲君はいつから?」 「君が転入してきた日から……」 「そう……」 「ごめん……ごめんなさい……」 フローリングの上に額を擦り付け、謝罪の言葉を繰り返した。 「真咲君、顔を上げて」 「約束を破ってごめん。一人ぼっちにさせて、ごめ……」 「謝る必要なんてないんだってば、全部知ってるから」 「……へっ?」 「土下座されたままじゃ、話も出来ない 「はい……」 ベッドを背もたれにして、二人横並びで座る。俺が落ち着いたのを見計らって優磨君が話しを始めた。  「入院した翌日、検査室に向かう途中で真咲君のお母さんと看護師さんが話しているのが聞こえてきて、君が階段から落ちて病院に運ばれていた事を知ったんだ。てっきりすっぽかされたと思っていたから驚いたよ」 「大雪の中、ずっと待っていてくれたんでしょ? ごめんね」 「真咲君だって辛い思いをしていたじゃないか、それに、俺も引越しの事を言えてなかったし」 「お父さんの仕事の関係で引越ししたんでしょ? 大変だったね」 「何で知ってるの?」 「看護師さんが母さんに話してくれたらしいよ」 「それって……個人情報漏洩じゃない?」 「言われてみれば、そうだね」  視線が重なり、どちらからともなく笑みが溢れる。 いつも、こうして優磨君の方から手を差し伸べてくれる。俺もいつか君のようになれるだろうか?

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